とうとうピアノがやって来ました。午後12時、楽器店の営業担当の方と、少し遅れて運送屋さんが到着。白い布団(?)にくるまれて、我がザウターはトラックの荷台に載っています。置き場所は1階ですが、家の敷地自体が道路から1mほど高くなっているので、クレーンで吊します。TarlinとErill、物見高さ丸出しで、2階のベランダからその様を見守りました。普段は見ることのない楽器の裏側が見えます。

 3時過ぎ、下呂に到着。宿に入ってもよかったのですが、せっかくなので下呂温泉合掌村に行ってみました。2月の飛騨で、気温は6℃。コートすら要りません。白川郷から移築した重文の合掌民家や、地元収集家のコレクションを展示した狛犬博物館、下呂の祭事、伝統芸能の資料館など、なかなか盛りだくさんです。下呂には、竹原文楽や白雲座の素人歌舞伎など、江戸期からの大衆芸能が息づいているのですね。こうした文化の蓄積も、古くから賑わった温泉地ならではなのでしょう。

2007年2月13日(火) 雪のない飛騨路

 年末のErillのピアノ発表会の写真とCDが出来上がりました。写真はともかく、CDとは・・・しかも自分が楽器を弾いている写真がジャケット・・・見るだに、顔から火が出そうです。本番よく弾けたのならともかく、数々の失敗が刻み込まれた録音、聴くだに恐ろしい、聴きたくもない、と思ったものの、怖いもの見たさならぬ、怖いもの聴きたさには勝てず、聴いてしまいました。
 本番の直後は、テンポの速いところで失敗したものの、ゆっくりしたところはそこそこ弾けたと思ったのですが、改めて聴いてみると・・・これは、一体なんなのでしょう?テンポの速いところだけでなく、ゆったり目の部分も緊張で制御不能に陥り、せかせかと急き込んでいます。まともに普段通りのテンポで弾けているのは、高速の山場を過ぎた最後の20秒?ほど(-_-;;; 。こりゃ、あきません。反面、初めての発表会だし、こんな物かも、とも思え、なんだかおかしくなりました。ショックから覚めた頃に、第三者の目で状況が見え、自分の失敗もと、かえって笑い飛ばせるものなのですね。まあ、発表会場のスタインウェイのきら星のような音色が、半永久的に残るだけでも、よい記念といったところでしょうか。
 しかし、間違いだらけの演奏録音よりも、さらに許せないものを検出。それは、写真。演奏中の姿を、舞台の正面から写したものですが、Erillの横顔、緊張で"のだめ"のごとく口をすぼめ、出来損ないの猿の惑星のような貧弱さではありませんか。・・・CDはともかく、この横顔の写真だけは、増やしたくないErillでした。

 早速ハ長調の音階をなでてみました。音程はそれほど狂っていませんが、弦がぶーんとなるような音がします。そして、結構響く!ピアノは、新しい環境に馴染み本来の音で鳴り出すまで数ヶ月、聞いていたのですが、これよりも鳴るなんてどうなるの、と思わず思ってしまうほどです。ヨーロッパの楽器の場合、一番よい音が出るのは、数10年後、と楽器店の担当さん。出来て一年以内だと、音質はその半分くらいだそうです。う〜ん、いい音でずっと弾きたければ、長生きしなければいけません(^-^)。
 さっそく一曲弾いてみました。ショールームで他機種と弾き比べた時は、渋く落ち着いた音に聞こえたのですが、部屋でこれ一器だけを弾くと、明るく可憐な音に聞こえます。ショールームでは素朴な南ドイツの森が浮かんできのですが、今我が家で鳴っている音から思い浮かぶのは、ウィーンの少女趣味な可憐な装飾の家々。これがザウターの「ウィーン風の音色」なのでしょうか。モーツアルトが似合いそうです。

 これからどんな音になっていくのか、楽しみです。(もちろん、楽器に応えられるよう練習も必須!)

2007年2月27日(火) ピアノがやって来た♪

 Tarlin & Erill宅で、3日前から槌音が響いています。1月に契約したピアノを迎えるための防音工事です。ピアノを置く部屋は、三カ所候補がありました。
 2階の空き部屋 → 地震が怖いので却下
 1階リビング → 床暖房でピアノの響板が割れるおそれあり、却下
 1階和室=Tarlin母様部屋 → 人の居住空間で災害時が心配だが、何とか睡眠時の
 安全圏を確保できる広さはある。電子ピアノがある部屋だし、楽器のためには一番
 無難。
 ということで、一階の和室に置くことに決定。この時点で、改装が必要になりました。まず、畳のままだと安定も音響が悪いので、ピアノの下になる畳一畳分を板敷きに張り替え、200kgの荷重に耐えるように束を入れます。そして、防音のため、障子を外して防音ガラスの内窓をはめ込み、二重サッシにします。1日目に、床の補強と畳から板敷きへの変更が完了(所用丸一日)。2日目は半分に加工した畳を入れ(ものの10分!)、3日目に防音サッシを取り付け(3時間ほど)、無事に工事は完了しました。
 障子がなくなったので、和室に合うロールカーテンを取り付ける予定ですが、これは少し遅れて後日。また、Tarlinせっかくの休みの日にErillごときの下手なおピアノに平安を邪魔されたくないという、Tarlinのわがままな希望で、2階の寝室のドアを防音扉にする工事も頼んだのですが、これはドアが出来るのに日数がかかるため、3月以降になりました。
 というわけで、すべてが終わったわけではありませんが、ピアノを入れるのに必要十分な部分の工事は本日で完了。後は来週の搬入を待つばかりとなりました。一週間よ、早く過ぎて♪

 少し視界は悪くも、風と雨の向こうに村の佇まいを拝むことが出来ました。展望台を降り、村を歩いてみました。重文の和田家から「行く年来る年の寺」明善寺まで、下を歩くと、屋根一面、雪に覆われているものの、写真でよく見る合掌屋根から迫り出す小山のような厚みには、ほど遠い積もり様です。豪雪地帯も、普通の積雪。それが、この冬なのでしょう。
 しかし、昨日までの陽気で積雪は減ったとしても、今日は激しい風雪。次から次へと雪が落ちてきます。中途半端に積もった路面で、少し間違うと道の脇にスリップしそうです。豪雪地帯を実感させられます。五箇山にも寄ってみました。もう4時過ぎだったので、人気もあまりなく、淋しいほどの静けさ。飛騨越中の山旅の終わりに、五平餅でも味わいたかったのですが、それを売る店は開いておらず、写真数枚だけを撮り、村を後にしました。
 越中の山を降り、砺波平野に出ると、雪は消え、今度は黒々と恐ろしげな雲に、雷と横殴りの雨が襲ってきます。北陸特有の冬(早春?)の嵐(?)。荒天は、福井嶺北まで続きました。3日連続で山の温泉と素朴ながら豊かな食を楽しみ、3日目には本来の冬景を見ることもかないましたが、始めから終わりまで、異様な天気にみまわれた旅でした。
 
 まわりは、吹雪の森。ブリザード(本物はこんなもんでないでしょうけど)に吹かれながらの温泉・・・貴重な経験でした。
 

 今夜の宿は、山形屋。江戸末期創立の老舗です。館内は静かで、落ち着いた雰囲気。部屋で一服してから、温泉につかりました。下呂の湯は、透明でさらさら。これまで入ったことのある温泉と違って、ぬめりがありません。一見、普通の湯と変わらないのに、出た後も数時間たっても体がぽかぽかしています。夕食後、就寝前に貸し切り露天風呂で、再び湯につかりました。浴槽と床板は、檜。温かい湯気に蒸らされ、檜の香りが浴場を包んでいます。のぼせかけの頭を、冬の川風がここちよく冷やしてくれます。川のせせらぎの向こうに、湯の町の灯が見えます。今までどちらかというと自然の中の温泉ばかりでしたが、街の温泉の情趣もまたいいもの。食事も飛騨牛やタラの芽など、山の幸たっぷりの、落ち着いたほどよい味、スタッフの控えめなもてなしも好感がもて、いい宿でした。

2007年2月2日(金) 発表会の追い衝ち

 宿には、二つの露天風呂があります。今朝は坂道を少し上ったとこにある奥の湯へ。雪交じりの寒風が吹き付ける中、湯に飛び込みました。焼岳山麓の熱い湯が寒気に冷まされ、ほどよいぬるま湯になっています。いつまでも入っていられそうです。
       
     

 整った木目が壁紙のように揃った、柔らかな白い響板。「綺麗ですね」と、楽器店の担当さんに思わず漏らすと、「ドイツ・スプルースでも、いい物なので白いんですよ。」とのお話。はるばるドイツから運ばれてきたかと思うと、胸がじーんとなりました。
 庭で方向転換し、窓から部屋に運び込み、板敷きの床の上に防振インシュレーターをはかせて、設置完了。チェリー材のシンプルでいて無機的でないデザインなので、驚くほど和室に合っています。

 中尾温泉の湯上がりは熱いくらい温かなのですが、今回はさすがに温もっていません。奥の湯から出た後は、慌てて建物に駆け込み、内湯でしっかり温まりました。中尾温泉の湯上がりは熱いくらい温かなのですが、今回はさすがに温もっていません。奥の湯から出た後は、慌てて建物に駆け込み、内湯でしっかり温まりました。湯の後は、朝食で香ばしい朴葉味噌をゆっくり味わい、ロビーでコーヒーを頂いてから、中尾を後にしました。
 待ち望んだ雪の飛騨。高山散策にも惹かれましたが、雪の風情を求め白川郷を目指しました。春に訪れていたときは人でごった返していた村も、さすがに今日は静か。駐車場からのシャトルバスで、荻街城山天守閣展望台に上り、雪の合掌村を見下ろしました。

 今朝は、気温氷点下6℃。雪。時折、吹雪。奥飛騨に、普通の冬が戻ってきました。雪は少なくも、庭も車も白く覆われています。季節外れの風景に辟易していたTarlinとErill、やっと求めていた風景が現れました。
 

2007年2月15日(木) 雪の飛騨

 冬の飛騨路、2日目。しかし、冬の飛騨にそぐわず、朝から雨が降っています。宿のスタッフも口々に、異常な気象への不安を語っています。今日の目的地は、奥飛騨温泉郷。奥飛騨まで行けば、降る雨もさすがに雪に変わるのでは、との期待を抱いて宿を出ました。
 途中、高山に寄りました。Erill、冬の高山は10数年前にも一度訪れていますが、その時は一面の雪景色。今日は、2月というのが嘘のような雨です。せっかくの街並ですが、散策もままならぬ雨脚。春慶塗会館と屋台会館で飛騨の匠の技を鑑賞し、奥飛騨へと向かいました。
 下呂の旅館の朝食がたっぷりだったので、昼食も要らないほど。寄り道もせず、奥飛騨へ向かいました。高度は徐々に上がるも、雨は一向に雪に変わる気配を見せません。山の中腹まで、見える範囲はすべて雨です。気温は、標高1000m地点でも4℃。恐らく、山腹の中程の雲に隠れている当たりからやっと、雪になっているのでしょう。
去年は大雪で、宿まで無事たどり着けるかどうか心配になりましたが、今年はしきりに降る大きな雨粒で、視界が悪く、大きな雨音も不快。やはり運転しやすくありません。宿のある、中尾高原に到着。標高1200m。西穂高と焼岳の麓で、裏側は上高地です。この分では、標高1500mの上高地も雨でしょうか。2月の上高地で雨・・・考えたくもありません。途中、かまくら祭りの会場を通り過ぎました。今日は最終日なのに、せっかくのかまくらが雨にそぼ降られ、溶けて形が崩れています。この分では、中止でしょう。
 3回目の冬の中尾平。去年、改装されたばかり客室はお洒落で、快適そのもの。しばしくつろいで、お風呂へ。いつもの冬なら、内風呂のガラス張りの壁一面に大小のつららがびっしり連なり、さながら「つららの壁」になるのが、今年は雨にけぶる雪原。宿の人の言葉では、「3月の風景」です。新しく出来た露天風呂に入ってみました。木の柱と屋根に守られて、温泉に浸ると、柱と屋根の木枠の中に、小雨降る雪の雪原が見えます。まるで絵の中にいるよう。心地よい時が流れます。夕食は、あたたかな味の家庭風創作料理。かまくら祭りは、やはり中止。その分、部屋でゆっくりくつろぎ、安らかな眠りにつきました。

2007年2月14日(水) 雨の奥飛騨

 年明けから週末は出張続きのTarlin、2週連続で休みがなく、疲れがたまり気味。たまにはのんびり休もうと、今週は、世間の3連休明けに自主3連休を設けました。冬と言えば、雪。そして、温泉。雪見旅行をすべく、毎冬出かけている奥飛騨へ出かけました。
 今回の旅は、2泊3日。1泊目は、下呂温泉。一昨年前の年賀状お年玉くじで2等があたったのですが、その宿泊券がようやく使えます。下呂は、高山よりは一時間ほど南。飛騨川に沿って谷をさかのぼっていくと、左右に並ぶ山並みは白く、あたりにはそこここに雪・・どこまで行っても雪がありません。京都の家を出るときもそうでしたが、春先と見まごうばかりのぽかぽか陽気です。白かったのは、名古屋の北から見た白山のみ。異様です。

2007年2月8日(木) 鹿に負けたErill

 バイト先の大学に行く時、通る奈良公園。夏から冬へ季節を通して歩いていると、四季折々の表情に気付きます。桜や紅葉など、樹木の変化もさることながら、奈良公園といえば、鹿。鹿の様子も、季節によって変わります。
 夏、毛並みも顔つきも健やかだった鹿達の様子が変わり始めたのは、秋。明るい茶色に白いまだらの夏毛から、灰褐色の冬毛に変わるにつれ、毛並みも顔つきも、何やらすさんでいます。冬に入り、毛並みはぼさぼさと荒れ、表情は凄みすら感じさせます。秋冬は餌が減るからでしょうか、夏の頃は親子、もしくは一匹だけで餌を食べる姿が多かったのが、冬になると、群れでいるのが目に付きます。それも、群れている鹿の頭数が段々多くなり、道の脇に押し黙った屏風のように並んでいることもあります。側を通ろうものなら、通り過ぎるまでずっと見つめいます。まさに無言の圧力。餌をあげない人を、非難せんばかりのまなざしです。居並ぶ鹿の前を通るのは、冗談ではなく、心理的プレッシャーです。
 今日は、浮見堂の手前に鹿がたまっていました。10匹強でしょうか。歩道を見事にふさいでいます。鹿の群れの中を抜けようとしましたが、感覚があまりありません。人が近づけば避けるかと思い、強行突破を試みましたが、敵は微動だにしません。毛に触れるほど詰め寄っても、「ふん」と目を見やって、また知らん顔、「お前、何?邪魔よ」と言わんばかりです。
 つまるところ、Erillは敗北。白旗を揚げ、恐る恐る車道を歩きました。
 別の日には、車道に堂々と佇み、車を迂回させている鹿を目撃しました。さすがは春日大社の神の使い。強者です。最初から人に勝ち目はないのかも。(この時は、たまりかねて車から降りてきたたおじさんに、道ばたに押し出されていましたが)。思い起こせば、小学校の修学旅行で、鹿せんべいをねだる鹿に囲まれ、ポケットに口をつっこまれたのに始まり、奈良公園でお弁当を食べている最中に背中から噛まれたり、Erillと鹿の対戦成績は0勝3敗です。一度くらい、勝ってみたいものです。

2007年2月21日(水) 防音工事