今日はErillのピアノの発表会当日。本番の週になって、父の入院で四国にしばらく帰省したため、練習不足でかなり後退しましたが、ここ3日間の練習でなんとか復調。先生の教室での練習会にも3回顔を出し、出来る限りの上がり対策を講じました。が、しかし・・・当日の朝、昨日までは比較的落ち着いていたのに、プレッシャーで食欲が起こりません。いや、食べ出すと箸は進むのですが・・・ 
 発表会の集合は夕方4時。アップライトピアノのあるTarlin姉様の家で、二時間ほど直前練習させてもらい、ご一家にも聴いてもらって、予行演習。この時はあまり間違えず、そこそこ思っい通りに弾け、好感触。気持ちも大分落ち着きました。
 が、いざ、本番の会場に着いてみると、プレッシャー復活。客席でTarlinやTarlin母様と他の人の演奏を聴いているうちはいいのですが、自分の5人前から舞台袖で待ってている間がいけません。出番を控え、Erillの前の中高生も、楽譜を開け指練習したり、落ち着くために目を閉じたり。Erillの後の大人の人も、心身をほぐすために体操をしたり、そわそわした緊張感が伝わってきます。先生方も固唾を呑むように集中して舞台を見つめ、生徒の演奏に耳を傾けています。押し詰まるようなプレッシャー。Erill、自分の曲に集中するため、曲の情景にぴったりの北欧の雪景色の絵本を持って行ったのですが、眺めても気もそぞろ。役に立ちません。
 いよいよ自分の順番です。今日の会場は、秋篠音楽堂。304席の、小じんまりした、雰囲気のいいホールです。残響はすこぶる良く、スタインウェイの珠のような音色が、きらきらと響き渡ります。この響きと音色を、楽しめればよいのですが、とてもそんなどころでは(-_-;。舞台に出て椅子に座り、気を落ち着けようと深呼吸して、1曲目パルムグレン「星はまたたく」を弾き始めました。が、すでに意識が固まり指が制御不能です。思わぬ所でミスタッチを連発してしまいます。それでも、右手の星のまたたきを表す分散和音は、スタインウェイのまさにきら星のような響きに助けられ、左手の和音の旋律は残響が豊かなため音がいつもより楽に繋がり、何とか後半から自分なりに歌いながら弾き終えました。
 2曲目シベリウス「樅の木」。この曲は、静かなゆったりした旋律をいかに歌わせ、中間部の低音アルペジオの連続を速く、いかに情感豊かに大きく鳴らすかがポイントです。ゆったりした部分は、比較的落ち着いて弾けましたが、一カ所、左手の伴奏がすぽんと抜け、思わぬミス。それでも、スタインウェイのタッチに応じて音色を変える反応の良さを実感しました。高速アルペジオは・・・緊張で再び指が浮き、制御不能。出だし二度弾きするは、左手の音量は不足するは、ミスタッチで数カ所くらい崩れるは、で散々。Tarlin母様は、ちゃんと鳴ってたと言ってくれましたが。まあ、初めての発表会で何とか止まらずに弾けただけでも良かったのでしょうか。、Tarlin曰く「上手いことごまかしたな」。う〜ん、本番でごまかせるのは、大事でしょう、ということで(^-^;;;
 弾き終わった後も、緊張が止まりません。反省点が多すぎて、頭の中は混乱の極み。でも、先生が「よかったよ。いい音が出てた。自分の世界が出来てたよ。」と、おっしゃって下さったのは、嬉しかったです。
 それにしても、スタインウェイのコンサート・グランドの弾き心地は、素晴らしいものでした。指に吸い付くような黒檀と象牙の鍵盤。タッチ次第で欲しいときに欲しい音を出してくれる、抜群の反応の良さ。きらめくような、それでいて気品ある音色。旋律を無理なく繋げる豊かな響き。まさにピアノの中のピアノ。発表会でなく、普段の落ち着いた状態で(そんな機会ありませんが)、弾いてみたい、と思ってしまいます。実は、近々アップライトピアノを買うかもしれないのですが、この体験は楽器選びの参考になりそうです。
 発表会後は、家族で打ち上げ。Tarlin、Tarlin母様といっしょに近隣の創作魚料理店で、夕食。食後になって、やっと緊張が抜けました。これだけ緊張しても、来年も懲りずに出たいと思います。少しずつでも慣れたいなあ。
         
           

2006年12月15日(金) 世界不思議発見 言葉篇

 昨日の発表会の極度の緊張で、なかなか寝付けなかったErill。一夜明けると、さすがに気持ちも落ち着きを取り戻しました。いつもなら12月になれば起こる祝祭気分に、クリスマス・イブ当日にして、やっと入ったようです。せっかくの24日の日曜日、二人で大阪は梅田スカイビルのドイツ・クリスマスマーケットに出掛けました。雰囲気が出るのは、夕方、クリスマスツリーが点灯してからなので、それまでいろいろと用を済ませることにしました。
 午前中は、京都でTarlinのパスポート受理、楽器店で検討中のピアノの試弾、岡崎の洋食屋さんで名物のハヤシライスで昼食の後、大阪・梅田に移動、クリスマスのお買い物を済ませ、スカイビルへ向かいました。
 ドイツ・クリスマス・マーケットは、初年度に一度来たことがありますが、今日はイブ当日とあり、スカイビルに通じる地下通路からすでに凄い人の波です。会場に着いても、その混雑は変わらず、おちおち写真もとれません。年々人気が高まっているそうですが、その余波で、メリーゴーランドやツリーの前からは、ポピュラーの賑やかなクリスマスの定番曲が流れています。初年度は、厳かにドイツ民謡調の合唱が流れていたのですが・・・
 店も、初年度はドイツの物産がほとんどで、クリスマス・ビールや雪の結晶の刺繍入りの敷き布、ドイツ音楽のクリスマスソングのCDの小屋があり、ほとんどの小屋にドイツ人の店員がいて、本場の素朴かつ静かな雰囲気が漂っていましたが、今ではドイツの物をうる店は、ツリー飾りやワイン、お菓子など半分に減り、アジア雑貨やピザ屋など、ドイツと関係のない「売れ筋」の店が並んでいます。初年度の落ち着いた趣きを知る我々には、良さが失われてしまい、周りが賑やかであればあるほど淋しい気分になりました。

2006年12月23日(土) 発表会の緊張

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るようなビーフシチューで暖まり、お気に入りの築地という喫茶店で香り豊かなコーヒーを味わった後、京都を出ました。晩秋の似合う京の都、来年は、どんな紅葉を見せてくれるのでしょうか。

 Erill、9月から奈良の某大学で毎週、木曜日と金曜日にアルバイトをしています。内容は、世界各地の民話資料に目を通して、タイトルやら語り手やら地域やら、恩師の先生の研究に必要な情報をデータベースに入力するというもの。先生がドイツの研究所から持ち帰った資料なので、ドイツ語を始め、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語などヨーロッパを中心に、いろんな言語が出てきます。英語とドイツ語以外はほとんど読めませんが、どの国のどの民族のお話なのか、書名の独訳や出版地で大体分かります。それでも、中には何語か分からないもの、地球のどこのものかすら見当がつかないものもあります。そういう時は、書名にある謎めいた文字の並びを、そっくりそのままインターネットで検索をかけると、ものの数分もつかぬうちに大抵はどこの何語の話なのか、見事に判明します。そのほとんどがこれまで見たことも聞いたこともないような言語や民族。我々が普段見聞きするのは、実は世界のほんの一部にすぎないことに気付かされます。同時に、世界に散らばる希少な情報が、簡単に分かるインターネットの便利さに、改めて驚いてしまいます。
 たとえば・・・ 
 
  ウドムルト人 ― 旧称ヴォチャク人。フィン・ウゴル系民族(フィンランド人やハンガリ
            ー人の親戚)。 ロシア東部、ウラル山脈の西、ヴォルガ水系中流
            のウドムルト共和国に住む。

  マリ人 ― 同じくフィン・ウゴル系。アフリカのマリ共和国はMali、こちらはMari。
          ロシア東部、ヴォルガ中流域の平原部にある、マリ・エル共和国に
          暮らす。
 
  サンタル語 ― インド北東部。話者数1000万人の、インド最大の少数民族言語。

  ウビフ語 ― 北西コーカサス語族(ちなみに、チェチェンやダゲスタンは北東コー
           カサス語族)。もともとは黒海沿岸で話されていたが、1875年頃から
           トルコに移住。1992年に最後の話者が亡くなり、現在は死語。
           子音の数は、83! 

 子音が83・・・ なんでも、世界最多の子音数で、ギネスブックにも載っているとか。Erillの師匠曰く、「どんな唇してるんやろ。」 ・・・いや、唇の作りは普通と思われますが。 テキストを見ると、83の子音を表すために、ローマ字アルファベット(我々が通常使っているアルファベット)とギリシャ文字を併用・駆使し、付点や棒を加えて、涙ぐましいまでの工夫をしています。もはや、西洋文字記号全集です。
 人間の言葉で、そんなに奇想天外なものはないように思いますが、想像を絶することというのは、どんなものにも存在するのですのね。思えばデンマーク語や東南アジアの言葉にある、声門閉鎖(単語を言う途中で、一瞬だけ声門を閉じて、声を止めてしまう発音。一瞬、音が途切れて詰まるような聞こえ方になる)もなかなかのものでした。う〜ん、人間って、奥深い!

秋の終わりに、大木のゆったりした詩情に癒されました。 温室ではポインセチア展をやっていました。最近はピンクのものも出ているのですね。もうすぐクリスマスです。
 植物園を出たのは5時前。京の冬の名物、底冷えが襲ってきます。お昼はみたらし団子のみですませ、空腹の我々、バスで四条に出、祇園の「銀の塔」というお店へ直行。ぽかぽかとろけ

 もう年末、暮れにバタバタする毎年の愚は繰り返すまいと、リビングの大掃除を決行。 TalinはO型故、掃除も始めたら結構きっちりとしないと気が済みません。この辺が、「そこそこきれいになれば」思想のA型であるTarlin母と違うところです。 しかし、不思議なのはErill。同じO型にもかかわらず、「何も、そこまでやらなくても・・・」などと曰うのです。それどころか、「そこそこ散らかっている方が落ち着く」などという始末。 とんでもない O型です。
 と、まぁ、こんな話はどうでもいいのですが、掃除も佳境に入り出した頃、みんなのお腹の虫も騒ぎだし、Erill が「何か買いに行こ」とか、Tarlin母が「何か食べに行こ」とか、一人埃まみれになって奮戦している Tarlin にふざけた言葉を投げかけます。しかし、今まさに掃除の天王山という場面で茶々を入れられたくなかったので、Tarlinの独裁裁定で宅配ピザをとることにしました。で、本題はここからです。相変わらず長い前置きお許し下さい。 m(_ _)m Erillがピザ屋さんに電話をして注文した後、興奮気味に「ねぇねぇ」と嬉しそうに話しかけてくるではありませんか。話の内容を聞くとこうです。「ピザを注文したら、住所とか聞かれて・・・」 まぁ、当たり前ですな。
「その後に、お宅は一軒家ですかって聞かれた。」 ふむふむ・・・ うん? 「一軒家?」

2006年12月3日(日) 京洛 紅葉散歩

2006年12月16日(土) 人里離れたTarlin家

 12月第一週の週末。最盛期は過ぎましたが、紅葉は終焉前の最後の彩りを見せています。先先週は別件で出かけ損ねたTarlinとErillも、京都に紅葉散策に繰り出しました。
 最初に訪れたのは、下鴨神社、糺(ただす)の森。ここは、楓の種類が違うのか、土地の条件なのか、紅葉は他よりかなり遅れます。今行くと、5分〜7分くらいで、緑から朱まで五色の色合いが美しい・・・と思いきや、枝先にわずかに朱が差している程度。みごとな緑の参道です・・・(-_-;。あと10日は待たないとだめでしょうか。
 国宝の社殿に参拝した後、参道を少し戻り、糺の森の入り口にある河合神社に寄ってみました。ここは普通の楓で、紅葉はもう終わりかけでしたが、社殿の佇まいが麗しく、狭めの境内に、小さいながらも檜皮葺の屋根に黒塗りの壁が重厚な、精巧な細工のようです。鴨長明が方丈記を執筆した庵が復元され、資料の展示もあります。文学とのゆかりが、また風情をかきたてます。心に残る、雅な神社でした。

 空気の乾燥度合いが少し悪いようで少し霞がかかってしまっていますが、いつもは山容すら伺うことが出来ないのに比べれば上々です。 しばし、その雄姿に時間も忘れて見とれてしまいました。
 その後は、日本三大鰤の一つ「氷見鰤」を買い付けるために、魚屋さん(氷見の町の商店街には魚屋さんがたくさんあります)に行って、小ぶりの鰤を一本(去年の日記にも書きましたが、正月前では、一本・片身・4分の1ブロックという買い方がデフォルトのようです)買いました。 その場で捌いてもらって、半身は Erill の実家に送りました。氷見の鰤は新鮮なので、クール宅○便で送れば、翌日でも十分刺身で食べることができます。 そして、我々も気付けばお腹がへってきていたので、小川屋食堂という小さなお店で、遅めのお昼ご飯をとることにしました。 店内に入ると地元のおやじさん達が昼間から酒盛りしていて、 お世辞にも綺麗なお店ではありませんでした(Erillが選んだお店ですが、店に入った瞬間、「しまった」と思ったみたいです)が、でてきた料理を食べてびっくり・・・ 刺身と魚の天ぷらは、まさしく舌がとろけるような美味しさでした。
             「地元のおやじが集うお店」 = 「安くて美味しい」
という方程式を再認識した瞬間でした。

2007年12月31日(日) あぁ 雨晴海岸

 12月も押し詰まってくると、Tarlin はそわそわし始めます。 まぁ、こんなお歳なのでお年玉をもらえるわけでもないのでお正月が待ち遠しいというわけではありません。 では、何にそわそわするのかというと・・・ それは、富山のお天気情報がどうなのか気になってそわそわとしだすのです。 実は、ずっと以前から能登半島の付け根にある雨晴海岸から、海越しに冠雪した立山連峰を見てみたい(3千メートル級の連峰が海越しに見えるという風景は世界にも数えるほどしか無いそうです)という願いがあったのです。 それも、年末休暇に入って、付近の工場も停止した澄んだ空気の下で・・・  「じゃ、行けばいいじゃん」という事なのですが、確かに行くのは難しくはありません。しかし、願っている雄姿を見るのは並大抵ではないのです。雨晴海岸付近が単に晴れていても拝むことができません。立山を含めた一体が高気圧に覆われて、しかも空気が乾燥しなければなりません。 実際に、Tarlin は過去に数度と無くチャレンジして、いつも空振りに終わり、その腹いせに焼け寿司を食って帰るという不幸に見舞われ続けています。 そして、今年も、12月31日の富山県地方が晴れるとの天気予報だけを頼りに、長駆、京都の家を出発したのでした。
 して、その結果は・・・

 それでも、前にはなかったドイツの味、北ドイツの「スモークハムサンド」なるものを売る小屋を発見。いかにもドイツ職人気質のおじさんが、「Lecker!Lecker!Lecker!(レッカーレッカーレッカー=旨いよ!旨いよ!旨いよ!)」とドイツ語で威勢良く呼び込むのも、よい雰囲気です。さっそく試してみました。香ばしいドイツパンにタマネギの甘みがスモークハムの味を引き立て、素朴な美味しさです。その後は、ポカポカのグリューワインを呑みながら、定番のソーセージを試しましたが、ドイツらしいしっかりした味わいに舌も心も満たされました。
 お土産にグリューワインを一本購入。電子レンジで1分、温めて飲むそうです。寒い日に、楽しみたいと思います。そういえば、ドイツのグリューワインはシナモンとかスパイスだけですが、デンマークのクリスマス用シナモン入りホット赤ワインはグレッグと言って、レーズンやナッツも入り、もう少しマイルドな味です。またいつか、飲んでみたいなあ。

圧巻は、ふうの木。池のほとりに一本だけ佇む大木が、空いっぱいに枝を広げ、全身朱く染まる姿は、時を忘れさせます。

2006年12月24日(日) クリスマス・マーケット

 気持ちもお腹も満腹になって、京都に向けて帰る途中、再び雨晴海岸に寄ってみました。すると、霞も多くなってきていましたが西日が山の頂上を朱に染め上げて、昼間とは違った、暖かみのある美しさを醸し出していました。でも、地元の方の話を伺っていると、今日程度では大したことはないようで、稀に、ほれぼれするような立山が顕れることがあるそうです。いつかは、そんな立山連峰を見てみたい。という希望を抱いて家路につきました。

「・・・いっけんや」 ・・・ 「い・っ・け・ん・や〜」 えぇ、久々に心地よく笑わせていただきました。「一戸建て」のことを「一軒家」にすり替えるピザ屋の店員。すばらしいギャグセンスです。しかし、単なるボキャ貧ということも考えられます。真相は分かりませんが、一軒家を目指してピザはその15分後に到着しました。 めでたしめでたし。 

 加茂みたらし茶屋で、名物のみたらし団子を食べ、バスに乗って府立植物園へ向かいました。広い敷地には人もまばらで、ゆったり散策できます。池の周りにつくられた楓の森の紅葉は、最盛期は過ぎたものの、午後の日に照らされ艶やかに輝いています。